アニメ感想置き場

アニメの感想とか書く

WHITE ALBUM 面白かったと思うんだけどな……

(2021/2/6ちょっと書き直した)

WHITE ALBUMは1998年にLeafアクアプラス)から発売されたアダルトゲーム。アニメは2009年の冬に第1クールが、同年秋に第2クールが放送された。

anime.dmkt-sp.jp

 

あらすじ

舞台は1986年11月。藤井冬弥(CV前野智昭)は、自分を救ってくれる多くの「女神」によって、自分は構成されていると信じている夕凪大学2年生。高校のころから交際していた森川由綺(CV平野綾)は新人アイドルとして花開こうとしており、中々会えない日々が続いていた。

幼馴染の河島はるか(CV升望)、高校からの先輩の澤倉美咲(CV高本めぐみ)にも由綺との関係をやや心配されながら過ごす中、バイト先の喫茶店「エコーズ」に由綺と、その先輩でもありトップアイドルの緒方理奈(CV水樹奈々)が新たな女神としてやってきたことで、物語は動き出す。由綺のマネージャーの篠塚弥生(CV朴璐美)や、家庭教師のバイト先の教え子、観月マナ(CV戸松遥)とも出会う中、由綺と冬弥の関係はどうなっていくのか―

 

個人的キャラクター紹介

・観月マナ

冬弥の家庭教師先の教え子で受験を控えた高校3年生。母親がM&Mミュージックの社長の神崎樹であることが途中で明かされる。

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©PROJECT W.A. より

「バッカじゃないの!」が癖になる。一人だけ年下なので、他ヒロインに比べてもヒロインとしては弱くてかわいそう。キスしてもらえてないのはこの娘だけな気がします。

金銭的にしか愛されていない割にはすごくいい娘に育っていて健気ですね……。もっと壊滅的な性格になっていてもおかしくないだろうに。

 

・河島はるか

冬弥とは小中高大と同じ幼馴染で男友達のような距離感。テニスでインターハイに出場したことがあるスポーツ少女。兄を交通事故で失くしている。

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©PROJECT W.A. より

幼馴染ヒロインの割には4番手5番手くらいで不憫かもしれない。

亡くした兄の面影を冬弥に感じながら、一度それ以上を経験したら、やっぱりお兄ちゃんでいいやってなるのはなんかかわいい。

 

・澤倉美咲

冬弥や由綺、はるかの高校からの先輩で1学年上。演劇部に所属しているようだが、部長の田丸と過去に何かあったようでいいように使われている。

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©PROJECT W.A. より

本人も言ってるけど一番卑怯な女性。前半クールでは、冬弥と由綺が会えないタイミングに、何日も冬弥を独占するわ冬弥の父親に気に入られるわするし、高校時代から冬弥のことを好きだったのに、まだ諦められてなかったり。

やっぱりやめようって言って、冬弥の友人である彰君(CV阪口大助)と付き合いだしたのに、結局冬弥のことを諦められなかったり、一番人間みがある弱い人だった。

 

・篠塚弥生

緒方プロ所属の由綺のマネージャー。冷血だが、由綺を支えようとする気持ちは本物。

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©PROJECT W.A. より

由綺のマネージャーとして、由綺のアイドルとしての障害になる冬弥との密会を続ける。この人だけ最後まで何考えてるのか理解できなかった。弱みを見せるシーンがほぼないので、「普段は強気に振舞っているけど、実は……」みたいなキャラと解釈するのも難しい……。「もはや冬弥は由綺の障害にならない」という最終判断でありながら、「私の負けです」というのも一見すると矛盾しているので、わかりにくいですね……。

由綺や理奈を差し置いて、肉体関係回数堂々の第1位でしょう(というか由綺も理奈もそういう関係にはなっていないような気が……)。情事シーンは大体カットされているので、そういうシーンでされたはずの会話が全部ないのが、キャラをつかみにくい原因なのかもしれません。今の深夜アニメならこういうシーンも描いてそうだけど、尺が足りないか……。

 

・緒方理奈

兄が経営する緒方プロ所属の人気アイドル。勝気な性格だが、おとなしい性格の由綺とは仲が良い。

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©PROJECT W.A. より

歌手としての魅力が強くて女性としてどうかっていうのはあまり分からなかった。人としては自分の気持ちに気づいたらスパッと認めて、由綺に遠慮なんかせずに勝負を挑む、さばさばとした感じにも見えるけど……。

それでも冬弥宛ての由綺の手紙の内容を胸の内に溜めてたときとか、移籍が決まったときなんかは弱みを見せていて、そういうところが印象に残ります。普段は強気なキャラクターが見せた「弱さ」に弱い。

最初の方からなんかどっかで見た目が似ているキャラを見たことがある気がするんだけど思い出せない。ひょっとしたら大昔にニコニコの動画のアイコンとかでこの娘を見たのかもしれない。うーん……。

 

・森川由綺

夕凪大学2年生で緒方プロ期待のアイドル。大人しい性格で、自分を責めることが多い。

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©PROJECT W.A. より

冬弥の「日常」から「女神」になれるかという前半と、実は一番最初の女神だったという後半。一番成長したのはこの娘なんだろうなあと思いつつ、本編で冬弥のやってきたことを全部許せるならマジで女神だと思う。

それにしてもこんなキャラも平野さん演じていたんですね。2009年の春夏が確かハルヒ2期だったから、ハルヒ2期に挟まれた分割2クールだったわけで。「お前はゆきじゃなくてハルヒだろ!ww」とか言われていたのかもしれない。

 

あと、この真ん中で花束持ってるのが一応主人公の藤井冬弥

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©PROJECT W.A. より

 

ヒロイン以外のキャラクターも、冬弥の友人の彰、理奈の兄の英二、ライバル会社の社長の神崎、2クール目から本格的に登場するライバル会社のアイドル、めのうなど個性的なキャラクターが多いです。なんなら、こいつまだ出番あったのかよみたいなキャラも何人か出てきます。(英二以外はアニメオリジナルキャラクタ―と知って驚いた。)

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神崎樹 ©PROJECT W.A. より

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左:松山めのう 右:緒方英二

©PROJECT W.A. より

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田丸 ©PROJECT W.A. より

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平良木 ©PROJECT W.A. より

まだ七瀬彰とかフランク長瀬とかもいるんだけど画像だらけなのもよくないのでこれくらいで。

 

感想

携帯電話の無い時代を描く恋愛物。多くのヒロイン(女神)との複雑な関係性や物語進行に加え、浮気やすれ違いといった恋愛の怖い部分を描いていく作品。特に後半のどんどん泥沼化していく展開は、見ていてワクワクした。

複雑な上に丁寧には説明せずに描写だけだったり、言外に物語ったりとで、それなりに集中して見ないとキャラクターの行動原理や状況が把握できず、結果としてなんだかよくわからないまま終わってしまった、という感じにもなる。

が、「逆にそこがいいんだよな」と思えるくらいの作品。

シリアス目の多角関係が好き、1作品に深めにハマりたい、という方にはお勧めできるかと思います。

 

肉体関係含む三角関係ものであること(あと、「ここがあの女のハウスね」の元ネタの元ネタであること)くらいの事前情報で見たけど、上のような感じで個人的には面白かった。ただ、見終わってネットの感想を見ると低評価が多い……。ってことで、できる限り反論できないか試みてみようと思った次第です。

 

批判に対する擁護

ネットの低評価の理由はざっと見ると

  1. 内容が分かりにくい

  2. 内容が暗い

  3. オチが微妙

  4. 原作から内容を大幅に変えている(いわゆる原作改変)
  5. 主人公が好きになれない

  6. (2009年時点でみても)作画が古臭い

あたりかな?

一つずつ見ていく

1.内容が分かりにくい

これは本当にその通りで、なんとなく毎週見ていたらさっぱりわからなくなってもおかしくないような気がする(しかもこれ分割2クールだし……)。5日くらいで一気見した僕でも??ってなったし、特に1話のよくわからなさは僕もうっすらと「ちょっと見る作品ミスったかも……?」って思えるくらいだった。

内容が全然わからないということではなく、前半のクリスマスコンサートまでに冬弥を避けようとする由綺と、それを知らないせいですれ違う冬弥っていう大枠はわかる。細かいところのキャラの言葉や行動の意図がわからない、というのが積み重なっていく感じで、余計にもどかしさを感じてしまうのかもしれない。後半はより複雑でわかりにくくなるんだけど、そういった複雑に絡み合うキャラクター同士の思惑とか行動とかが面白かったともいえるので、中々難しいですね……。こういう、気持ち悪さはもどかしさが全て解消される展開にカタルシスがあって、マイナスからプラスの評価に転換されるところに魅力の一つがあると思いますので、そこがちょっと弱かったのかなーって感じがします。

群像劇作品の難しさだよなとも思う。そういう意味で、群像劇をわかりやすく描ける作品っていうのはすごい(小並感)。(反論かこれ?)。

 

2.内容が暗い

美少女ゲーム原作アニメは、序中盤は主人公と美少女たちのキャッキャウフフなハーレム系で終盤は謎シリアスからハッピーエンドみたいなのか、ずっとキャッキャウフフ系な作品が多いイメージでしたが、これは序盤から暗いし不穏だし、明るいタイミングというのはまずない。で、一応の決着は見せつつも、最後まで若干暗いまま終わる。なので美少女たちを目的に見るとまず見ていられないと思う。僕個人は三角関係というのは知った上でみたので、そこは大丈夫でしたが……。

ただ、このず~っと不穏な展開も好きな層がいたはずだと思うんですよ……。原作からして浮気とすれ違いのシナリオなので、原作が好きな層にまで否定されるかといわれると……。そういう方からも評価が低くなるのはやっぱり1と3、4が原因なのかな……。

 

3.オチが微妙

結局誰エンドかがわからないというのも批判されてた。個人的に由綺以外ありえないと思っていたので、ネットで意見見るまでうやむやエンドとすら思ってなかったし逆に驚いた。まあ確かに言われてみれば……?

ただ、過去の出会いを思い出した状態で由綺から「待ってます」の暗号を貰ったなら行かないわけないと僕は思うんですけどね……。

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ポケベル文字 ©PROJECT W.A. より

もう一つがずっと引っ張ってきていた冬弥と由綺の幼少時の思い出の内容がちょっと弱い……。冬弥が何かを忘れているらしき描写、由綺が何かを思い出してほしそうにしている描写、冬弥の父やはるかが由綺の事情を知っていそうな描写があることから、冬弥と由綺が幼いころに知り合っているが、冬弥はそれを忘れているということが割と早めに(それこそ1クール目の途中には)わかったはず。なので、視聴者としては、冬弥がなぜ忘れてしまっているのか、由綺がなぜ思い出してほしがっているのか(由綺が冬弥を好きになるきっかけになるようなイベントがあった?)というところが気になる。前者の「忘れた理由」については最終回で丁寧めに説明してくれるし、そこに冬弥が「俺の女神」論者になった原因とかも絡んできていてそこ自体は悪くなかった。ただ後者の由綺がここまで冬弥を好きになる理由については、ちょっと不十分な感じが否めなかった。

なので、「俺の女神」論者とか由綺は女神ではなく日常とか、っていう1話からの伏線はきれいに回収されるけど、由綺が好きになった理由がよくわからず肩透かし感があるのがオチ部分の低評価の理由かなと。本当にめちゃくちゃに引っ張るしねこれ……。

ここが1つ目の内容の分かりにくさと合わさって、もどかしさが一気に解決するっていう帰着がうまくいかず、結果的にただわかりにくいだけでオチも微妙な内容、という批評につながってしまっている気がする。

 

4.原作から内容を大幅に変えている(いわゆる原作改変)

原作改変した内容が面白ければそこまで言われないはず(原作至上主義であればそれでも評価は低くなると思うけど)なので、上の理由と組み合わさってって感じがありますね。

キャラクター面で言えば、特に後半はアニオリキャラのM&Mミュージック(M3)のキャラクター(神崎樹社長とか、松山めのうとか)がメイン級に出てくるので、原作が好きな人からしたらこんな知らないキャラ出されても……ってのはあるだろうと思う。また、原作なら由綺が理奈をぶつ修羅場シーンがあるらしいけれど、それがなくなってるっていうのは修羅場を期待した層からも確かに期待を裏切られたのかもしれない……。

ただ、原作を知らない状態で見た僕としては、アニオリキャラクターたち(神崎、めのうだけでなく、長瀬、平良木、田丸なんかの男キャラ勢も)は結構いいキャラしてたと思う。原作知らなければ違和感はないし、アニオリだって知って驚いたくらいには世界観になじんでいたキャラだったと思うので、ここは批判しやすい理由として使われている感じがしますね。本当に原作が大好きな人からしたら気の毒なのは間違いないけど。

原作がギャルゲーだと、基本的には各キャラクターごとで数話ずつという『アマガミSS』とかの方式でなければ、オリジナルにせざるを得ないので仕方ない面もある。しかも原作は、由綺以外のルートだと由綺と付き合いながら他ヒロインと浮気するっていう展開らしいので、『アマガミSS』方式だと合計5つの世界で由綺を裏切ることになるし、さすがにそれはかわいそう……。

 

5.主人公が好きになれない

これも否定できないですね……(さっきから全然反論できてねえ!)。冬弥は由綺と付き合っているのに、電話は中々つながらないし(大体他の女のために何かしてたりする)、由綺と会えないし……。序盤は由綺側が意図的に避けているというのと、それが冬弥に伝わってなかったってのもあって、まだ多少同情の余地はあったんだけど、由綺の手紙の内容を聞いてからも弥生と関係を続けるのは「なんで?」ってなってしまった。

ただ冬弥にも同情できなくもなくて、「彼女が原因わからないけど中々会ってくれないので誘ってきた大人の相手に甘えてしまった」とか、「精神的にかなりぐらついている先輩、知り合いを放っておけなかった」とか、「父親が亡くなって辛くなった時に先輩に「今日だけ」甘えてしまう」とか、まあ許せないこともない部分もなくはないかなー……。ただ、やっぱり由綺の気持ちを知ってから弥生と関係を続ける点と、はるかの想いを一度断りながらその後結局……ってなるのは納得いきませんねえ!

(もう一回見直したら、はるかの方は由綺よりも前から冬弥が好きだった、これまで辛いときに頼ってきた女神(はるか)への恩返し、という理由で百歩譲ってなんとか納得できたが……。)

 

6.(2009年時点でみても)作画が古臭い

又は単純に作画のクオリティが低いといったもの。

当初見た時は作画は悪くない(良いとは言っていない)と思っていたので、いうほどか?ってなったけど、まあ冷静に考えて見直すとやっぱり2000年代の終わりにこれってのは確かにちょっとダメか……。2000年代半ばなら許されていた気がするんだけど……。それでも13話のコンサートシーンなんかは枚数使って頑張ってたと思うし、時折挟まれる水彩?色鉛筆?のような画も悪くなかったと思うんですよね……。

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©PROJECT W.A. より

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©PROJECT W.A. より

ものすごい作画崩壊とかもなかったし……酷評するほどではないと思う。あと、時代設定が1980年代というのもあるので、その時代を意識した古臭さだったという説もなくはないと思います。

 

 

なんか反論しようとしたけど、大半は認めてしまった格好になってしまった。

ただ、悪いところだけを箇条書きされて悪いアニメ!ってなるのは良くなくて、良いところがないかも見てあげる必要があると思うんですね。KOTYなんかでも悪いところだけ上げる箇条書きマジックは嫌われる傾向にあるし。全くケチのつけようのない作品以外は悪いところがいくつかは出てきてしまうものなので、良いところがないか、という視点も必要だと思うんですよ。ということで、個人的に良かったと思う点を頑張って言語化してみたい。

 

個人的に良かったと思うところ、好きなところ

  1. 曲(+ライブ)
  2. 詩的、文学的な演出、言葉回し
  3. 多数のキャラクターがそれぞれに行動していく過程、怒涛の展開
  4. 80年代の世界観
  5. すれ違いの演出

 

1.曲(+ライブ)

なんか最初に曲を褒めるの、曲だけは良いみたいなクソゲー評っぽくなって嫌だな

曲についてはどこの感想を見ても基本的に高評価でした。それだけ名曲ぞろい。OPの深愛」なんかはエロゲー関連曲で初めて紅白で歌われた曲だけある。

なにより劇中歌が良い。一応アイドルを扱う作品でもあるので、アイドルである由綺と理奈にはそれぞれ2~3曲ずつくらい曲がある。最近のアイドルものはグループによる歌唱がメインでソロ曲っていうのは少ない(そう考えると虹ヶ咲はすごかったな)けど、80年代の国民的アイドルということもあり、基本的にソロ。

由綺の『WHITE ALBUM』、理奈の『SOUND OF DESTINY』、二人の『POWDER SNOW』はどれも良かった。全部カバーというのが信じられない(原作時点ではキャラにCVがなかったので曲も別の人が歌っていた)。歌うタイミングも良くて、13話の『WHITE ALBUM』のコンサートは由綺がこれまで冬弥に見せていなかったアイドルとしての一面を見せる出来だったし、最終回の『POWDER SNOW』は普通に感動した。

これについては、それぞれのCVである平野綾さんと水樹奈々さんの歌唱力を信頼しているなーという内容で、ダンスとかはほぼなくただ歌に集中できる感じが良かったし、ちゃんとその後の展開に納得のいくだけの歌だったと思います。

www.youtube.com

 

2.詩的、文学的な言葉回し、演出

サブタイは全て詩的なものになっていて特徴的。1話でブラウニング詩集がどうたらとか色々言ってるのもあるし、最終回のサブタイはそのままブラウニングの詩の邦訳そのままになっている(2話で該当の詩のページをちらっと映すのもなかなか凝ってるけど、こんなん初見では気づかんだろ)。毎回の次回予告は例の色鉛筆絵が動くような演出で、文字の現れ方なんかも色々な見せ方をしていてよかったと思う。この雰囲気が好きなんですけど、まあウケない層にはウケないのは否定できない。

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©PROJECT W.A. より

ブラウニング詩集については、2chとかでも考察があったりしたので引用。

https://5ch-ranking.com/cache/view/anime2/1252252793

787 : 
名無しさん@お腹いっぱい。

 2010/01/09(土) 23:21:01

ところで、正月休みに、アニメ『White Album』をDVDでぼんやり見直していたところ、一点だけ気がついたことがあった。タイトルにもある通り、
ロバート・ブラウニングへの言及について、である。

◆「第一頁」:チェスタトンとブラウニング
たとえば、EDでのクレジットには次の二行が見られる。
Respect for R. Browning
      G. K. Chesterton

すでに指摘されている通り、この英語文についてはまず、ブラウニングの評伝をチェスタトンが書いているという事実を確認する必要がある。
「第一頁」における澤倉美咲と七瀬彰(と藤井冬弥)の会話にも、「チェスタトン」とか、「評伝」とか、「ブラウン神父」といった言葉が見られるのは、
このあたりの英文学的常識に関連している。富士川義之編訳『対訳 ブラウニング詩集――イギリス詩人選(6)』(岩波文庫、2005)の「解説」が参考になる。

◆「第二十六頁」:二回の言及
これもすでに指摘されていることだが、ここにまとめておく。
最終回のオシマイにて藤井冬弥は「まったく世界はオーライさ、か」と呟くのだが、この台詞もまた、ブラウニングの詩から取られている。
“Pippa Passes” (「ピッパが通る」)の詩句 “All’s right with the world!” がその典拠である。しかし、この有名な行を「オーライさ」などと訳したのは、
White Album』がはじめてだろう。

また、最終回のサブタイトル「僕たちは一緒に座っている、一晩中、動くこともなく」もまた、この英国詩人への言及である。最も早い段階での
詩 “Porphyria’s Lover” からの引用だった。
And thus we sit together now,
And all night long we have not stirred

◆「第二頁」:赤黒装丁の詩集
「第二頁(第2話)」Bパートにて、緒方理奈は「電話番号 おしえて」というメモを、ある詩集に挟んで冬弥とひそかにやり取りをするが、このメモが
挟まれているのが『ブラウニング詩集』なる赤黒の装丁の本だった。「下畑鈍」なる人物が訳しているこの本は、おそらく実在しないものだろうが、
興味深いのは、理奈がこのメモを挟んだページがずばり、「ポーフィリアの恋人」のページであったということだろう。「第二頁」と「第二十六頁
(最終回)」とがここで共鳴していることになる。

「ポーフィリアの恋人」は「超」がつくほどの初期の作品らしく、というのも、岩波文庫『対訳』版では冒頭に掲げられている。しかしながら、
「理奈メモ」が挟まれた位置、つまり『White Album』においてこの詩(の和訳)が掲載されている位置は、詩集の中ほどとなっている。こうした
配置の不自然さにも関わらず、「第二頁」は「ポーフィリア」のページを理奈&冬弥に選ばせている。最終回との「共鳴」への準備だったというところだろう。

この「赤黒本」の訳文には活字が使用されており、かなり細かいのだが、読み取り可能である。アニメ版の邦訳を冒頭の数行だけ転載する。

今日は黄昏から雨模様で、
 ついでに陰鬱な風まで起きだして、
憎らしい楡の天辺を引っ掻いたり、
 湖面を騒々しく苛立たせたりさ。
 胸が塞がれる思いで、僕は聞いていたんだ。

原文は。
The rain set early in to-night,
The sullen wind was soon awake,
It tore the elm-tops down for spite,
And did its worst to vex the lake:
I listened with heart fit to break.

参考までに、富士川訳は。
今宵は早くから雨が降り出した、
 陰気な風もやがて目を覚まし、
憎々しげ楡の梢を引きちぎり、
 湖上の波をひどく騒がせた。
 悲痛な思いで、ぼくは聞き耳を立てた。

「ついでに」とか「~さ」とか「~いたんだ」とか、『WA』での訳は軽い。あるいは、個性的。この「軽さ」あるいは「個性」は、『White Album』の
各回のサブタイトルにも見られる「恥ずかしさ」に近いだろう。

 

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©PROJECT W.A. より

(元記事が消されていましたので削除)

他にもこの部分を含む「ポーフィリアの恋人」へ言及されているものがありました。そっちも紹介。(ネタバレを含みます。)

sengchang.hatenadiary.com

 なんとなくですが、ノベルゲームは何かしらの欧米の文学的要素が含まれているようなことがあるイメージです。教養が足りないので、その辺はこうやって先人の考察にあずかることしかできないのが悲しい。

 

また、登場人物の言葉回しもやたら詩的になったりする。冬弥が理奈に対して言う「身代わりなんだって。ド忘れ。忘れちゃいけない、もっと大事なものを忘れない代わりなんだって」とか、冬弥父が死期を予測した際に冬弥に伝えたセリフ(走馬灯のように色々混ざって~みたいな内容)とか。セリフではないけど、美咲が冬弥の父に宛てた手紙なんかはそのまま文字を映すだけっていうのもアニメっぽくない。冬弥父はアニオリキャラクターらしいので原作からのものではないと思うし意図的に追加してるんだろうけど……。

こういう気取ったセリフ回しはウケない層もいると思うし、そういう人から見るとやたら小難しくしてスベってるという評価にもなるかもしれないので、結局これは面白いところの評価にならないかもしれない……。

 

あと画面上に冬弥の心の声が文字として現れるという演出なんかもほぼ毎回あった。アニメを半分聞くように見る人とか、なんとなく見るタイプには不評かもしれないけど、個人的にはこの演出が結構好き。

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©PROJECT W.A. より

効果として、声に出さない心の声である、というのがわかるだけでなく(それなら内心の独白として声を入れてもよい)、声ではなく画面に集中してほしいという意図なのかなと思う。声を入れるとどうしてもその声の演じ方、情感などに少し気がいってしまうけど、絵に出てくるならそこを見ることになる。また、どういう気持ちに基づく言葉なのかが想像に委ねられるという効果もあるかな……。

 

3.多数のキャラクターがそれぞれに行動していく過程、怒涛の展開

特に後半だけど、序盤からもあちこちで問題が色々発生していく感じが群像劇の良いところな気がする。一つ目の問題がまだ解決してないのに、二つ目、三つ目と問題が発生していって解決したりしなかったり、みたいな感じが毎回続きが気になる原因なのかなと思ったり。特に20話以降は問題が山積みになっていってその辺が好きだったかな。で、まあ一応最終回までに全部の問題がそれなりに決着は付いてるからまだよくないか?と思った。(全く未解決のままってのは、さくら団解散からソロデビューしたのに事務所がなくなったサリーくらい? でも一応移籍したみたいな言及はあったかな)

ただ、悪いところの1、3でも書いたけど、こういうのって終わりよければすべてよしにの逆に、終わりが微妙だと全部微妙みたいになってしまうし、そこでオチが弱いのがダメなのかもしれない。

面白かったところを上げようとしてるのになぜか悪いところになってしまってないか?

 

4.80年代の世界観

街の風景とか、CDではなくレコードがどうとか、固定電話しかない感じとか、ポケベルの暗号とか。昭和のアイドルらしいテレビ番組(ザ・ベストテンっぽい番組(いや僕は見たことないけど))を始め、街の描写一つとっても昭和の空気感があり、最近の作品にはない独特な雰囲気で個人的には好みでした。

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©PROJECT W.A. より

ただ厳密には80年代だとするとちょっとおかしいらしいとも。ポケベル全盛期は90年代半ばらしく、86年は流行りだしたころくらいらしいので、流行に疎そうな(アイドルとしてはどうなんだ)由綺が暗号として使ったり、スポーツ少女のはるかがそれに気づくのもなんだかおかしいのかもしれない*1。これは原作が96年を舞台にしていたのもあるんだろうけど……(アニメに際しては10年時代を前にしたらしい。国民的アイドルとかの設定が96年だと無理があったからとも聞いた)。

なんでかな、良かったところを上げようとしているはずなのにな……。

 

5.すれ違いの演出

世界観でもそうなんですけど、携帯電話がない時代ということで、すれ違い(物理的にも心理的にも)がめちゃくちゃ発生する。一番顕著なのは4話で、由綺と冬弥はデートの待ち合わせ場所と時間を間違えて、お互いがお互いを探そうと行動したせいで結局出会えたのは夜になってからという展開。今ではまず発生しないけど、当時はこういうこともあったんだろうな……という気になった。

電話っていうのもこの作品の象徴的なアイテムで、本当に何度も何度も電話の着信音や留守番メッセージが鳴り響くので、電話の音がトラウマになるかもしれない。

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©PROJECT W.A. より

テレフォンカード(テレカ)とか、公衆電話なんて今ではあまり見ないでしょうし、使ったことない人も多いのでは……?(公衆電話はともかく、テレカは使ったことないですね……)

携帯電話が普及する前の時代の作品(アニメに限らず、ドラマとかの方が多いのかな)では、こういった展開はもはや使い古されていたのかもしれないけど、今の時代には逆に新鮮に映りました。

 

なんか、良いところをあげようとしているのに失敗してない? 面白かったと思うんだけど、自分の語彙力表現力では限界だったらしい。

まあいちオタクに色々考えて書かせようとするくらいの作品だったというのだけ感じてもらったらそれでいいや……(諦め)。

 

一か所だけ好きなシーン(というか展開)をあげておこう(ネタバレでもあるから反転だけしとこ)。

19話、冬弥は移籍した理奈のマネージャーになり、理奈からしたら唯一頼れる存在になった(由綺から一時的に理奈が奪った)。しかし、22話で冬弥は1日だけ他の女(マナ、はるか)のところに行ったため、理奈は一人でレッスンをすることになって寂しさを感じるという展開。自分が奪ったあとに奪われる辛さを理奈に感じさせるパラレルな構造になっていたように思う。この辺で、多くの“女神”の力になろうとしても、結局どこかで破綻して皆を悲しませてしまうというのを見せつけられる感じが好きですね。ここで冬弥が内心で「女神(ここでは理奈)が悲しんでいる 俺が悲しませてる」って気づくのは悪くないと思う(まあそのあと「なぜ?」って続くのでこいつは~~~~!ってなったけど)。ちゃんと最終回でその辺は自覚してたので許す。

これ、最初はよくわからなくて、冬弥が唐突に「自分は誰も愛しちゃいけなかったんだ」とか言い出して??ってなったんだけど、見返すとあ~そういうことか~ってなったので好きだった。

 

その他

実はこの作品は、『WHITE ALBUM2』を見る前に、見ておかないとなーということで見た(1/25から1/29の期間)ものでした。 (ツイートから1か月遅いのは突っ込まないで)

 

『WA2』は『冴えカノ』で有名な丸戸さんが原作の脚本を務めており、アニメ版も脚本を担当されています(どちらかというと、WA2で有名な丸戸さんが冴えカノを書いたという時系列)。氏は『WHITE ALBUM』に感銘を受けて、自ら2の企画を持ち込んだ、と聞き、それであればまずこちらから見ておこうとしたものです。

丸戸さんの作品にどう受け継がれているかは三角関係であるということ以外なんともいえませんが……。

唯一挙げるなら、『Classroom☆Crisis』でのアレは、ホワルバの田丸のアレのオマージュだったのかあ!ってなりました(でも田丸はアニオリキャラらしいので、違うかも?)。

 

ただ、本作品単体でも十分見る価値はあったなと。 特別好きなキャラクターはいなかったし、見てて楽しいというよりは苦しいストーリーでしたが、ずっと続きが気になる不思議な魅力のある作品でした。

 

2の方もdアニメストアで2021/1/29に追加されましたので、2月中には見ておきたい。

*1:ちなみにポケベルは2019年までサービスが継続していたらしい